在宅でできるライターといえば、SEOライターやシナリオライター、メルマガライター、ニュースサイトのライターなどでしょうか。
わたし自身、複数の仕事を掛け持ちしてはいるものの、今も在宅ライターのひとりです。
15年以上執筆の仕事を続けてきて思うのは、わたしにとってライター業は本当に裏方仕事だったなということです。
わたしには記名記事と呼べるような記事はありません。取材に出向くこともできないし、大手のメディサイトで人気のライターとして活躍してきたわけでもありません。
そんなわたしでも、ちゃんと報酬をもらうことができ、さまざまな仕事の経験を積むことができています。
在宅Webライターは専門職
在宅でできるWebライターは、基本的な国語力があって、文章を書くのが好きであれば誰でもなれる職業です。
しかし、基本的に在宅ライターの場合は、自分の名前が表に出ない、ゴーストライターの方が需要が高いと思ったほうがよいです。
前途したようにわたし自身、自分の名前を出した記名記事を書いていません。
それは、取材であちこち飛び回ったりアポイントを取ったり、交渉したりということができなかったからです。生活環境的にも難しかったし、性格的にも、以前は無理でした。
ネットの記事や書籍、論文など、手元で自分で調べられる情報をうまく使い、文章を作る。それが在宅ライターの仕事です。
知人のなかには、地元の情報をあちこち歩き回り、足を運んで、取材交渉したり、写真を撮影したりしながら自分の知名度を高めている人もいます。
あるいは、元々何かしらの専門資格や特化した知見を持っていて、それを文章にして届けるというライターをしている人もいます。たとえば、保育士や教員免許、ファイナンシャルプランナーや不動産業、医師免許や薬剤師……など。
専門資格を持っていて、さらに文章が書ける。それも、読み手の視点に立って、Webの特性を理解して記事として仕上げられるという人も、なかにはいます。
自宅のデスクだけで、本やネットの情報だけで記事を書くこの仕事は「コタツライター」と揶揄されたこともありました。でも、世間で批判されるコタツライターやコタツ記事はごく一部です。
在宅で調べられることを文章にまとめるのだって、立派なスキルであり専門性だと思っています。その理由を、次の章で詳しく説明します。
在宅Webライターが専門職だといえる理由
個人的に、在宅ライターは専門職だと思っています。実際に自分が記事を書いてきた経験に加え、ディレクターとして記事の手配をしたり、チームで採用をするようになってから、ますますそれを感じるようになりました。
専門知識があっても「わかりやすい文章」が書けるとは限らない
近年のWebライター市場では、何らかの専門性を持った人でなければ仕事がない、という話をよく耳にします。重複しますが、国家資格を持っていたり、別の業界で働いていた経験をもとに、Webで情報発信するというケース。
もちろん、高い専門性や経歴をもちつつ、わかりやすい文章が書ければ引く手数多であることは確かです。
その一方で、いくら専門性が飛びぬけていても、一般のユーザーが読んで理解しやすく、ためになる文章が書けないということも、めちゃくちゃ多いのです。
専門知見のある人は監修者になったり、インタビューを受ける側になることが多いです。それを文字に起こしたり、記事として最終的にまとめ上げるのは、とにかく文章が好きで得意なライターの役割だと思っています。
そのため、専門資格のない、雑記Webライターの需要は今後もまだまだあると思っています。
読み手への想像力や企画意図の汲み取りなどもスキルのひとつ
もうひとつ「想像力」や「企画意図の読み取り」といった部分も、Webライターの専門性のひとつではないでしょうか。
論文が書けるような文章力やリサーチスキルがあったとしても、結局Web記事は論文ではありません。
たとえば「ニュースサイトで流し読みするタイプの記事」なのか「SEO検索で読まれる記事」なのか、それとも連載で毎週ファンが楽しみに待っているような記事なのか。
記事の用途や、読まれる経路によって、ターゲットやニーズというのは大きく変わるのです。
そのターゲットやニーズをしっかり想像して書くと、文章の中に出てくる細かな言葉の使い方やニュアンスの出し方もおのずと変わってきます。
情報の選び方も変わりますし、共感のしかたや語尾の使い方など、ディティールが全然違うのです。
「記事の向こう側に、生身の人間がいる」という想定で書いた記事と、構成案に書かれているターゲットやニーズの文字をチラッと見ただけで書いた記事とでは、確実に細部に差がでます。
ただし、そこまでちゃんとターゲットやニーズを捉えないまま書いているライターさんもたくさんいるなと思いますし、捉えていないままの記事を世に出しているようなことも、正直ままあります。
だからこそ、ターゲットについてしっかり考え、こだわれるライターさんは、たとえ在宅ライターであっても、この職業を立派な専門職として誇りをもつべきです。
裏方として書き続けられる人は強い
SEOにしろシナリオにしろメルマガにしろなんにしろ……自分の名前が世に出なくても、ずっと書き続けられる人は強いです。
映画やドラマの製作スタッフはエンドロールにしっかり名前が出ますけれど、ライターは出ないんです。たとえそのメディアのスタートアップを支えたとしても、検索1位をとっても、ニュースサイトでバズっても、それを自慢することはできません。
ときには完全にゴーストライターになるので、自分のやっていることがなかなか日の目を見ないような感じがしてしまうこともあります。
ブックライターのように、構成者などとして名前が載るような代筆業もありますが、Webの場合は多くが無記名です。
でも、それに対して憤りや歯がゆさを感じない、あるいはその思いを乗り越えて、書くことだけに集中できるメンタルは屈強です。
わたしもかつてそれを感じたり乗り越えたりしました。そして今は依頼をする側として、それを感じています。
この業界の報酬はそれほど多いわけでもありません。さらに、掲げられるような実績としても残らない。
それでも、スキルを磨き続け丁寧に執筆し、試行錯誤しながら原稿を上げてくれる人は、絶対に重宝されます。「この記事は気合入れたいから、あの人に依頼しよう!」「〇〇さんには安心して依頼できる」「〇〇さんの原稿は読むのが楽しみ」などと思う人は確実にいますものね。
別にライターに限ったことではないのですが、仕事というのは魂を込めた分だけどこかでちゃんと返ってくると思います。
職人であり、裏方であるWebライター
在宅ライターは、いわば現代の職人だと思っています。技術が進歩して、AIの台頭なども叫ばれていますが、正直優秀なライターには適いません。
裏方として、書くことそのものや、ひとつの記事を作り上げることに「おもしろみ」を感じてほしいなと思います。
わたしは、どんなメディアも編プロも、ライターさんありきで回っていると思っています。だからこそ、これからライターを目指す人や、奮闘中の方も専門職として苦悩しつつも楽しんでいってほしいと思っています。そして自分自身も、いちライターとしてまだまだ鍛錬していかなければと思っているところであります。
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