「AIの普及で、ライターの仕事はなくなる」
このような話は、前々からいろいろなところで見聞きします。実際に、私も仕事でAIをかなり使っています。
もちろん、単純に記事をAIに書かせて丸投げしているわけではありません。AIを使うことによって、余分な労力を使わなくて済む部分に取り入れているという程度にすぎません。
それでも、実際にAIを使ってみると、その可能性をひしひしと感じるのが本音。
ここでは今後、AIの普及によってライターの仕事がどう変わっていくのか、わたしなりの持論をまとめています。
SEO記事・記事作成代行の需要は高まっている
結論から言うと、SEOライターや、記事作成代行業はしばらく需要があると考えています。
SEOは1990年代の後半から始まり、30年以上の歴史があります。しかし2024年現在でも、まだまだSEO記事の需要は高まっていて求人数は増えているとのこと。
多くの企業や店舗がSEOによるマーケティングに参入してきているので、SEO記事そのものの需要はしばらく続くと考えられています。
それに、キーワードは無限に増えます。新しいモノ・人・サービス・制度・システム・ニュースや事件……ありとあらゆるものが毎日増え続けているので、増えた事柄に関連するキーワードというのは無数に増えると考えるのが自然です。
近年では、時代の変化もめまぐるしく、新しいサービスや制度、流行の商品やワードなども続々増えていますから、それに伴って検索キーワードも無限に増えていくでしょう。
ただ、一般人として正直にいえば、SEO記事を上から全部じっくり読むことがほとんどありません。ちょっと気になったことや知りたいことは、検索結果の強調スニペットで十分事足り、最近のGoogleではAIが検索結果を要約してくれるようにもなりました。
記事そのものにアクセスすること、最後まで読了する機会は以前よりも少なくなっている側面はあると感じています。
そして、AIの台頭によって「文章を作るだけ」という仕事は減ってしまう可能性も感じます。
実際にAIを使ってみると、本当に人の手が要らないと強く感じるからです。
たとえば、AIライター:ChatGPT無料記事作成ツールというオープンソースのツールがあります。このツールの精度はかなりよくて、希望するテーマの記事を非常になめらかで読みやすい文章で書いてくれます。
WEBのSEO記事に対応した形で書くようにプログラムされているのか、ChatGPTで記事を作るよりもはるかに自然で、そのまま記事として使用できてしまうレベルのものが作成できるのです。
わたしも普段、たくさんのライターさんに記事を発注しているのですが、正直このツールと監修者、チェックする編集者さえいれば、ライターさんは要らないかも……と思ってしまいました。
コストカットという面を考えると、ネット上で情報を集めてきてまとめるだけのキュレーション的なライター業務が減っていくと思います。
AIが普及しても「文章スキル」は活かせる
ただ、どれだけAIの性能がよくなっても、人にしかできないことや、文章や記事制作のプロにしかできないことがあります。
今後は、ライターが完全に必要なくなるのではなく、ライターの仕事の形が変わっていくのが本質ではないでしょうか。
AIの文章を「修正」できる
高精度のAIが書いた文章は、一見正確なように見えます。先ほど紹介したツールの文章は、文章のねじれや誤字脱字もありませんし、PREP法のように「理解しやすい流れ」でまとまっています。
ただ、細かく見ていくと構成に問題があったり、自分が制作したい記事の流れとは違った形で出力されている点もいくつかあるのです。
見出しのタイトルのつけ方がおかしかったり、統一感がなかったりという欠点も、ちらほらあります。
AIの間違いや欠点を見極めて修正できるのは、人間です。それも、WEB記事の制作にしっかり携わってきた経験やスキルが活きてきます。
漢字のひらく・閉じるといった、校正力も必要。数字データや、内容のエビデンスを確認する校閲の目線も大事ですね。
以前、わたしの関わっているチームで「文章能力が低い人に、AIでライティングをさせよう」という指示が出されたことがありました。
しかし、結果は失敗。記事を書いた経験のない人は、AIの出力した情報のどこをチェックすればよいのかを見極められないので、AIの文章を鵜呑みにしてしまいます。
もちろん、AIライティングのノウハウも全然出回っていなかったし、試行錯誤の段階だったので仕方がないのですが、修正に多大なる時間がかかってしまったため、その取り組みは途中で立ち消えしてしまいました。今ではこのチームでAIを実務的に使っている人はいません。
もしも間違った情報を世に出してしまい、それによってユーザーの生活に何か悪影響が出た場合、企業は責任を問われます。
AIが作ったものを、厳しい目線で審査し、正しい判断で修正ができる人でないと、AIライティングには大きなリスクが伴うこともある、ということですね。
AIの文章を「調理」できる
文章を「調理」できるスキルも、今後のAI時代には求められると思います。
あくまでもAIが出力する文章は、たたき台のようなものです。それを、どう調理すればおもしろくなるか、人の心を惹きつけられる文章にできるか、という「リライト」のスキルも大事になってきます。
たとえば、わたしは、ビジネス関連のメールマガジンを作成するときにAIを使用しています。このメールマガジンの目的と役割は、見込み顧客との接点を増やして、成約につなげるまでのリードナーチャリングのためです。
もちろん、メルマガでは有益な情報を発信しますが、顧客へ毎日1通送られる「手紙」であり、おもしろくて為になる読み物でなければなりません。
これを一から書くのもなかなか大変でして、ネタ切れしたり、書き出し方がわからなくなったり……という人間ならではの「生みの苦しみ」があったりします。
今は、このメルマガの土台となる文章をAIに任せ、よりおもしろくするための「調理」を自分がやる、というテクニックを使っています。
- 共感を引き出すための表現
- 実体験のエピソードを追加する
- センスのよい比喩表現を追加する
- 理解するための「たとえ話」を作る
このような部分は、まだまだAIには難しい……というより、不可能なんです。
どんな文章でもそうですが、やはり「人の心を惹きつける」というのは大事です。ニュース速報のように、事実だけを正確に述べることが大事なのであれば、AIでも構いません。
でも、リードナーチャリングだったり、LP誘導だったり、記事ごとにゴールがあるわけで、それを達成するには読む人の心を動かしたり掴んだりしなければなりませんよね。
それは、やはり書く人の表現やアイデア、発想、そして何よりも実体験なんです。
経験のある人の言葉は、必ず人に刺さります。記事の中にはかならず、自分の体験や実感からくる言葉を混ぜることが大事なので、その部分は「AIからのたたき台をどのように調理するか」という視点が欠かせないと思っています。
取材ライターや作家の活躍の場はまだまだあると思う
AIは「一通りの情報をまとめて、読みやすくまとめる」という基礎中の基礎の部分を簡単にやってくれるのが利点です。
でも「その人にしか書けないこと」というのは確かにあるのです。これが、取材ライターや作家、エッセイストなどの役割です。
SEO記事の場合は、書く人のオリジナリティは不要です。クライアントの要望に合わせ、中立的に書くことが求められます。自己表現をしたい人は、SEOライターにはなれないともいわれます。
だからこそ「AIの書いたものを、監修者と編集者でチェックすればよい」と、なってしまうわけですね。
でも「どんな人に、何を届けたいのか?」を考え、それを元に企画を立てたり、自分の経験や体験を自分の言葉で語ったりする「物書き」としての役割は、今後もなくなることはないはずです。
一から企画して、記事や書籍を作っていくのはクリエイティブでエキサイティングな仕事。一つのテーマをどのような切り口でコンテンツにするか、という部分には、人の深い洞察力や感受性、経験などが活きてきます。
ここにAIは及びませんから、今後も書く仕事そのものがなくなることはないと考えています。
何をAIに任せて、自分は何を実現したいのか
AIの台頭によって、書く仕事がなくなるとは考えにくいです。そのかわり、これまでのような量産型の仕事、キュレーション記事の仕事は減っていってもおかしくないと思っています。
ただ、今はAIを使用してはいけないという規則がある仕事も多々あるので、まだまだ人の頭と手で一から書いた記事が生産されていくと思います。そのなかで、記事づくりの基礎をしっかり学んでいくことが今の段階で必要なことだと思います。
AIの書いたものを審査できる視点、そして人の心にちゃんと届くように調理できるようになることも、今必要なライタースキルではないかと思います。
AIだけで書いた、価値の低い記事が量産され、世の中に溢れかえってしまうような世界も、正直あり得ると思っています。そういう記事を、いちユーザーとして見分けられるようになっておくのも大事なことだと思います。
何をAIに任せるべきか、そしてAIに任せることで生まれた自分の「余裕」を、どこに使うか。空いたリソースを使って自分は何を実現したいのか?というのは、これからもずっと考え続けていきたいと思うところです。
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